【5位】ノーゲーム・ノーライフ ゼロ【感想】


■毎週放送していたアニメの方はいまいち

 ゲーム中の駆け引きやロジックについては面白いと感じるものもありましたが、話し方や語尾でキャラ付けして、キャラクターの個性主張に工夫がないってだけで、すごく損してる気がします。ファンの方も作者の方も、おそらくそんなものは求めていない作品なのでしょうが、音と演出以外、特に拾って主張するような魅力もなく、私の感覚では、あまり面白いアニメではなかったです。

■目を引いたレビュー

 でもどこで見たか、映画の話は面白いぞ、という書き込みに興味を持ちました。
 簡単な一言程度でしたが、ちょっとおもしろい、という軽いものではなく、これはいいぞ、本物だぞ、という期待が膨らむ具合で。


■間違ってるぞスミヨシ!

 映画が公開する前に、映画化した話を確認する目的で、「多分これ」と、原作シリーズの「プラクティカルウォ―ゲーム」を購入しました。購入後すぐに読み始めましたが、数十ページくらい読んで、「これ映画にして売れるんか?」なんて、書き込みの評価とあまりに違っていて正直混乱しました。
 それもそのはずで、「プラクティカルウォ―ゲーム」は映画になった話の「別視点」の物語です。決して映画の話の原作ではありません。映画になったのは「ノーゲーム・ノーライフ6」です。

 あの書き込みでこの程度のはずないという確信があり、でも面白くない、と、引きずるように数か月だらだらと読んでるうちに、さすがに買ったものが違うことに気づいて、ついでに映画が公開されてることにも気づきました。


■Yahoo!映画☆4.6

 Yahoo!映画を確認したところ、☆4.6の評価に驚きました。
 Yahoo!映画の評価で4以上があるのかと、それが今公開中なのかと。その日のうちに観に行き、力強い演出の数々と音選び、画の丁寧さに素直に感動しました。※ストーリーは確かに「プラクティカルウォ―ゲーム」に少しだけ掠ってましたが、別物デシタ。

 キャラクターデザインについてはエクスマキナ以外つまらなかったですが、クラスタの画はまったく動かないのに迫力満点でめっちゃくちゃかっこよかったです。

 映像もいい、音もいい、ストーリー展開もいい、それでも肝心のストーリーについては、まだ私の中であの書き込みの評価には届いてません。


■メディアミックスによる弊害

 特に受け入れられなかったのが、シュビィの「戻りたくない」というセリフです。劇中あまりに唐突に投げられていてセリフが完全に浮いていました。
(媚びた感じで首傾げるのも正直うっとおしい)

 映画につきものの、利益追求のための上映時間制限が、原作の大切な何かを削っている可能性を疑い、次にそれが、リクとシュビィのやりとりにあると思いました。

 映画を観たその日のうちに書店で「多分これ」と、「ノーゲーム・ノーライフ6」を購入し夜通し読みました。今度はハズさなかったです。

 ストーリーは原作を確認して大正解でした。

 シュヴィの「戻りたくない」のところは原作の方がしっくりきます。
 映画ではかなり短く、唐突に「戻りたくない」の一言が出てきました。原作ではその一言がでるまでの、リクとシュヴィの会話の中に、「戻りたくない」に含まれる意味を汲むことができます。次のリクの笑う場面についても、原作と映画では別物です。

 映画でカットされた部分についてはほかにも、イワンの謝罪の意味、リクとシュヴィのいくつかのやりとり、アインツィヒの戦闘など多数ありますが、特に、リクの「カギ」については、リクの人物像を知る重要なキーです。また、リクとシュヴィの関係にとっては、2人の繋がりを強くした大事なきっかけです。
 上映時間に収めるためとはいえ、削っていいものとは思えません。


■そもそもアニメ化が難しい原作

 そして原作を読み進めるうちに確信しましたが、これ、映画にしにくいです。
 セリフの真意や状況の意味というか、説明がちらほらあるのですが、そこをどうしても映画じゃ表現しにくいんです。語り部を喋らすわけにもいかないし、解説キャラクター足すわけにもいかないし。原作ラノベ、文章だからこそ、読者に違和感なく情報の補足が可能になってると思います。

 それをどうやったら、あそこまで流れる映像を作れるのかと、映像化に関わった人たちは本当にすごいです。
 シュヴィとリクの変化はもっと時間を割くべきだったと思いますが、時間圧縮のための改変についてはかなりうまいものが多く、監督脚本のスペックの高さがうかがえます。


■大迫力の演出

 比較してしまえば演出はやはり原作より映画の方が圧倒的です。画や音の迫力がもうすごい、映画で特に力が入ってます。原作ではろくに描画説明されなかったシーンが、映画になると本当にきれいな映像に起こされてます。使われてる音は大好物ばかりで、あれを聞くために映画館に行ってもいいと思えます。


■それでも満足できません

 それでも☆4.6の評価は異常です。作品が海外に流れて維持できる評価ではありません。

 映像や音、ストーリー展開については一定の評価がもらえるはずですが、3点、原作・映画に共通して、作品から人が離れてく理由があります。

 まず、カタカナが多い点です。造名詞が多いというべきですか。

  ・オールドデウス
  ・アルトシュ
  ・アヴァント・ヘイム
  ・ファンタズマ
  ・フリューゲル
  ・ジブリール
  ・アーカ・シ・アンセ
  ・ワービースト
  ・エクスマキナ
  ・クラスタ
  ・プリユーファ
  ・アインツィヒ

 厨二心くすぐられるけれども、総称なのか概念なのか固有名詞なのか、も、分からなくなる。「ノーゲーム・ノーライフを鑑賞される方は紙とペンをご用意ください。」というほどに、あまりにも判別しにくい単語の数々に、記憶力が追いつかないのは私だけではないはず。

 2点目には童貞ネタがしつこいことです。

 見つかれば殺されるような数々の敵から身を隠しながら、限られた資源で生活し、戦火に呑まれないよう度々戦線を確認しに外に出て、囮になった仲間の死の上にようやく集落を維持して。。
 そんな環境で童貞であることをひたすら気にする主人公に違和感を覚えました。状況から、必ずしもありえない悩みではないのでしょうが、2回目あたりで正直しつこいと、こここそ削ってよかったのではと。

 3点目はシュビィにあてられた、童貞にとっての「理想の少女」像です。
 あまりにも狙いすぎてて、これを見た童貞がよりひどい童貞をこじらせそうです。小さくてかわいくて、おとなしく言うこと聞いて。童貞にとってこれほど都合のいいおもちゃはないでしょう。反吐が出ます。


■終わりに

 作品の熱量は大好物です。
 私は映画を観て原作を読んでまた原作を読んで映画を観て、あと何周するのかわからなくなってます。気になったことばかり書いてますが、原作も映画もいいとこだらけです。糧にしたいので何度でも触れて吸収します。

 あと、映画観てから以下の順で原作読んでますが、この順序当たりでした。

  ・ノーゲーム・ノーライフ6
  ・プラクティカルウォーゲーム
  ・ノーゲーム・ノーライフ4
  ・ノーゲーム・ノーライフ5
  ・ノーゲーム・ノーライフ6
  ・ノーゲーム・ノーライフ7
  ・ノーゲーム・ノーライフ8
  ・ノーゲーム・ノーライフ9

 アニメの音は好きですが、ストーリー重視の私にとってこのタイトルは「アニメより原作」です。原作では補足が自然な形で盛りだくさんで、放送していたアニメは要約したようなセリフがささっと流れてる感じです。「なんで急にそんなセリフ?」と度々なっていましたが、4~7の原作を読んでると一度もそんなことにならないです。補足あってこそのセリフがアニメでそのまま使われ、原作を表現しきれてません。

 映画の原作は「ノーゲーム・ノーライフ6」です。お間違いないように!


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